安藤寿康

本年度研究紹介:

ヒトの学習を特徴づける「教育(による)学習」は、個人学習や模倣学習・共同学習とは異なる認知基盤に基づいた学習様式であり、進化的な特異性を有すると考えられる。その認知的・神経学的・遺伝的メカニズムを解明するために、個人学習・模倣学習・教育学習の3様式を比較可能な学習課題を考案し、その予備的な行動実験を実施する。特に教育学習ではじめて登場する「教師」エージェントのいかなる社会的働きかけが、学習者の教育学習の発動にとって不可欠な必要条件であるかを解明することが、本年度の最も重要な課題である。視線(のみを向ける)、視線を伴うローカル・メンハンスメント、評価的フィードバック、明示的な説明や指示、権威性、など、さまざまな要因を同一課題のもとで実施し、比較する。

平成25年度の研究成果概要:

認知能力の個人差に及ぼす遺伝要因の影響を14年の長期縦断データをもとに解析し、青年期・成人期におけるワーキングメモリの実行機能が、認知のパーソナリティの両面に対して幅広く遺伝的影響力を長期的に維持していることを示す結果を得た。これを国際行動遺伝学会にて発表した。さらに双生児不一致法により、認知能力に差のある一卵性双生児の脳構造と脳機能の差異、ならびに遺伝子発現の差異を対応付け、認知能力の個人差の生物学的基盤を明らかにする行動ゲノミクス研究のための準備を行った。脳構造・脳機能のfMRIによる解析を玉川大学・脳科学研究センター(坂上雅道教授)にて実施し、遺伝子発現の全ゲノム・全エクソン配列解析を神戸大学大学院医学研究科(戸田達史教授、小林千浩准教授)、および国立遺伝学研究所(豊田敦特任助教)にて実施するために、研究打ち合わせと倫理申請を行い、双生児研究者に対するアナウンスメントを行った。本来は年度内に実施することを目指していたが、手続き上不十分なところが残っていたため、実際の実施は次年度に見送ることになった(なおこの行動ゲノミクス研究は、平成26年度からは科学研究費補助金基盤研究(A)で継続することとなった)。

平成24年度の研究成果概要:

認知能力(IQ)に関して差の顕著な一卵性双生児4組のMRI脳画像(一昨年に慶應義塾大学において撮像したデータ)、とくにresting stateでのdefault mode networkの予備的な分析を行った。一卵性双生児の脳の形態構造は視覚的にきょうだい間で酷似していることが確認されたのみならず、安静時でのresting stateでの脳の活動の部位間のネットワークも類似していることが示唆された。しかしそれを量的にどのように評価するか、そしてその中に見られる差異が認知能力の差異と関連があるのかについては、まだ検討されていない。
認知能力は意思決定の基礎過程であることは先行研究からも示されているが、意思決定の遺伝基盤を双生児法を用いてどのようにアプローチをしてゆくかについて、安藤・岡田はフランス高等師範学校(エコール・ノルマル・シュペリウールÉcole Normale Supérieure)のSacha
 Bourgeois‐Girondeおよびイスラエルの共同研究チームと研究打ち合わせを行い今後の研究方針と学術誌特集号の編纂の計画を立てた。
MRI装置が慶應になくなったことから、玉川大学脳科学研究所の坂上雅道教授との共同研究の体制を作るための打ち合わせを行い、倫理申請を行った。この研究は、これまでの研究を受け継ぎ、認知能力に差のある一卵性双生児の脳構造と脳機能を比較するためのresting stateを調べるものである。しかしこれはあわせて、遺伝子発現(これは神戸大学医学部・戸田達史研究室との共同研究による)と関連づけることを想定した。

慶應義塾双生児研究 (KTS)
首都圏ふたごプロジェクト (ToTCoP)
ふたご行動発達研究センター (KoTReC)


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