藤澤啓子

本年度の研究紹介:

遺伝要因と環境要因がさまざまな形式・レベルで相互作用しながら人間のあらゆる形質に影響していることが行動遺伝学により繰り返し示されてきた。本年度は、昨年度分析したデータを元に、きょうだい間における社会交渉と行動判断においても、同じ現象が見られるか検証することを目指す。二者間で行われる社会交渉は、社会交渉をする側と受け手側のそれぞれの影響、また二者間がそれまでに築いてきた関係性の影響を受けて生起するものであるから、二者間で行われる社会交渉に関しての変数は、社会交渉の参加者それぞれに対して独立ではない。この点を考慮し、かつ一卵性双生児と二卵性双生児の遺伝的類似性の差異を組み込んだ分析モデルを目指したい。

平成25年度の研究成果概要:

 幼児期の双生児きょうだいを対象に、限られた資源を獲得する際の二者間の協力行動の判断に影響を及ぼす要因について検討した。
 きょうだい間の協力行動を測定するために、協力してビー玉10個を獲得するゲームを実施した。ゲームには、二者間に勝ち負けはなくできるだけ多くの成功を目指す協力条件と獲得したビー玉が多かった子が勝ちとなる競争条件があった。また、母親に質問紙調査を行い、きょうだいに対する態度(親和的関わり・共感) と社会的適応(向社会性・多動性)を測定した。
 得られたデータのうち、5歳の同性双生児167組のデータについて分析を行った。まず、2人の合計獲得個数・1人ずつの獲得個数の差について条件・性別・卵性を独立変数とする分散分析を行った。その結果、協力条件では競争条件より合計獲得個数が多く、競争条件では協力条件より1人ずつの獲得個数の差が小さかった。また、卵性別の多母集団パス解析によりきょうだい関係・社会的適応が協力行動に及ぼす影響を検討した。その結果、協力条件において一卵性では共感性が高いほど、二卵性ではきょうだいに対する共感性が高いほど合計獲得個数が多かった。
 今年度実施した分析の結果、5歳の双生児は、協力条件では相手に譲ることを重視し、競争条件では平等な分配を重視しており状況に応じて適切な協力行動の判断をしていることが示唆された。また、一卵性では向社会性が直接的に協力行動に影響するのに対し、二卵性ではきょうだいに特化した社会的適応の高さが協力行動を促進し向社会性は間接的に影響を及ぼしている可能性が考えられた。
 研究の成果の一部を第25回日本発達心理学会(於 京都大学、平成26年3月)で発表した。

研究紹介:

幼児期の双生児におけるきょうだい関係が、きょうだい間の社会的なやり取りにおける行動判断とどのように関連するのかについて明らかにすることを目的とした研究を実施する。具体的には、5歳の同性双生児とその保護者を対象として調査を実施する。なお、参加者はすべて慶應義塾大学首都圏ふたごプロジェクト(http://totcop.keio.ac.jp/) の登録家庭である。
きょうだい関係については、保護者による質問紙調査を実施し、一人ずつの子どものきょうだいに対する態度を測定する。きょうだい間の行動判断については、協力条件と競争条件の場面を設定したゲーム形式のきょうだい遊びを実施する。きょうだい遊びの結果を基に、きょうだい間の行動判断における卵性・性別・条件の影響について検討する。また、質問紙調査ときょうだい遊びの結果との関連を分析することにより、きょうだいに対する態度に二者間で差異があることが、きょうだい遊びにおける行動判断に影響を及ぼすのかについて検討する。


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